撮影雑記(3)2015/0110〜0111
text 青池 憲司 Post 2015.10.28
第9次ロケ。ことし最初の石巻撮影行は、住民さんへの新年のあいさつを兼ねたロケ—ションでした。10日は荒れ模様の天気で、寒風が吹きつのり、日本製紙の煙突から上がる煙(水蒸気)が千切れるよう。雲のうごきも早い。そんな冬の原野のあちこちに小さな湧水池(というか大きな水溜り)が点在し、薄氷が張っています。震災後に露出した自然です。
一方では、まだ緒に就いたばかりですが、道路工事や宅地整備がはじまっています。これまでは、後者の進行を指して復興と呼んできましたが、この地では、前者と後者の融合を諮ろうとしています。
11日は仮設向陽団地に住む0さんを訪ねました。以前にインタヴューさせていただいた方です。新年のあいさつをと思いましたが、不在。お隣に訊いたら、お元気とのことでまずは安堵。この仮設には、門脇小学校児童の何家族かが住んでいて、その登校風景などを撮影した場所です(『津波のあとの時間割』)。その一家族を訪ね旧交をあたためました。あのときの小6生は中3生となり高校入試目前です。がんばれ、受験生。
この日も午前中は原野を撮影し、午後は、ご遺族の集り「蓮の会」に参加しました。スタッフ3人、キャメラは持たず、ただ被災地に繋がるもののひとりとして。
門脇小学校児童を主題にした2作品(上記作品と『3月11日を生きて』)は、震災後を生きる人びとの映画でしたが、いま撮影中の『題未定』作品では、亡くなられた方にも向かい合いたいと考えています。しばらくは、ご遺族のみなさんの語り合いに耳を傾けさせていただきます。『津波のあとの時間割』に登場する小4生(当時)の祖母もいらっしゃいました。原野には生者の声と死者の声がともに在ります。
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