撮影雑記(5)2015/0310〜0312
text 青池 憲司
Photo YAMADA Takenori
Post 2015.11.24
3月。第11次ロケ。2014年3月10日からはじめた新作映画の撮影はまる1年、震災からは4年がすぎましたが、この1年間の門脇南浜地区の風景に大きな変化はありませんでした。工事は助走の時期で、災害復興現場によく見られるブルドーザーや重機が轟音をあげながら動きまわるという光景ではなく、地震と津波で破壊された宅地の土台や基礎コンクリートの掘り起し・取り出し・整地、壊れた側溝の撤去、放置された街区の除草などが主に見られた作業でした。
風がやんで波がなくなり海が静まる「凪」のような状態がつづきました。あるいは、地を這うように遅々と進む(進んではいるのだ)状況下にありました。昨年8月末に起工した工事の"工程表"では予定どおりなのかもしれませが、まねきコミュニティの人びとは、自分の意思ではままならない"津波のあとの時間割"を強いられていました。
それが、ここへきてうごきに加速が見られます。門脇町と南浜町をほぼ区切るかたちで東西に走る八間道路(この地域の幹線道路)は、高盛土道路(嵩上げ高T.P5.4メートルで第2線防潮堤の機能ももつ)になりますが、その高さと幅員を示す標識台が2か所に建てられました。その上に立つと完成後の道路からの視界が想像できるのかもしれませんが、周囲に原っぱが広がっているだけの現状ではなんの実感もわいてきません。それでも、風景は変りはじめています。
11日。東日本大震災4周年。快晴。強風。まねきコミュニティの門脇町4丁目角にお坐りになっているお地蔵さんと風、善海田稲荷社の二本松と風、日本製紙工場煙突の真横に流れる煙(水蒸気)など「風」を撮影。毎週水曜日に行われる健康体操教室には、毎回20人以上の住民さんが参加しているが、いまはこの地域を離れている人たちの姿もあります。
社会福祉協議会のスタッフがインストラクターとしてやってきて、30分ほどのストレッチ体操(わたしもやりましたが本格的なメニュー)で体をほぐし、おしゃべりをたっぷりしてきもちをほぐし……いきいきサロンです。参加者は50歳代から上の年代ですが、男性は20数人中2、3人です。じいさんはなかなかでてこないねえ。80歳を超えた女性が3人いらして、その立ち居振る舞いがとてもチャーミングで、わたしは敬愛しています。
まねきコミュニティの集い。午後2時46分、集会所(まねきの家)まわりの空地に住民さんが集り黙祷しました。この日は学校が特別休みでこどもたちも参加しています。そのあと、お茶っこ(お茶やお菓子を食べながらの歓談)となり、やはり、あの日の話がつきません。Sさんのお墓は津波で大破し、骨壺が流されてしまっていまだに見つからないそうです。「この土地のどこかには眠っていらっしゃるだろうから、家のお墓だけでなく、四方に向って手を合わせます」と語っていました。
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