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撮影雑記(16)2015/1223〜1226

text   青池 憲司    Post   2016.6.1

12月23日。晴。第20次ロケ。まずは、撮影定点となっている日和が丘のポイントから新門脇地区と原野(南浜町、雲雀野町)の冬模様を撮る。新門脇地区の工事現場は、復興公営住宅と八間道路(門脇南光線)の嵩上げ盛土作業が行われているが、作業員の姿も重機類もパラパラとしか見えない。工事が一段落したわけでも休工日でもない。では、工事が進んでいないのかといえば遅々として進んでいるのである。こういう状態を毎日見ているとツカレルネ、というのがまねきコミュニティ住民の実感である。

宮城県石巻市
石巻市

原野は葦原がひろがり湧水池が点在する状態がつづいている。いまは枯れ葦原である。日和山からの伏流水と石巻湾の海水が入り混じる池には小さなイキモノが生まれている。この地域のランドマーク的存在の善海田稲荷社の二本松は、枯死しかけているように見える。

宮城県石巻市
石巻市
宮城県石巻市
石巻市

毎週水曜日の健康体操教室。いつもながら高齢女性たちが元気だ。身体も口もよくうごく。わたしもキャメラの傍で身体をうごかす。

門脇町2丁目の旧九軒町辺りは、宅地や1号公園予定地の嵩上げ盛土作業と地盤整備がほぼ終り、年明けから新築住宅の建設が増えていくだろう。そんな状況を前に、高橋興治さんとの立ち話を撮る。「だんだんと周りのかたちは見えてきたが、どれだけの人がかえってくるか、どれだけ新住民が増えるか。わたしの心配はその一点」。そういえば、以前にインタヴューしたときにもこのことばが出て印象に残った。

夜、まねきコミュニティの忘年会に参加。日ごろキャメラをとおしてお付き合いの面々と酒杯を手にした酒談懇談の数時間。よきときを頂戴した。

25日。曇後晴。濱谷勝美さんといっしょに及川彦兵衛さんを仮設向陽団地に訪ねる。和菓子職人の濱谷さんが手づくりしたクリスマスケーキを及川さんにプレゼントする。話は、門脇町の様子と復興公営住宅の工事進捗状況、おたがいの近況や一日の過しかたなど。いつもとおなじ話の展開であった。日日のくらしにそんなに珍事変事があるわけではない。

26日。晴。まねきコミュニティの日和山階段清掃と餅つき。冬晴れの温暖な日射しのもと、土蔵とまねきハウスの前で、2臼7キログラムを搗いた。男たちに交じって遠藤佳子さんがダイナミックに杵を振った。引っ越し先からやってきた小笠原悠吏少年も杵を持った。搗きあがった餅は一同に配られ、参加できなかった家々には配達された。佳子さんと悠吏くんの名コンビがフットワークよく墓地を抜け工事中の砂利道を踏みデリバリーした。いまの地域の道路事情ではどこへ行くにも墓と砂利道は通らねばならない。

新作映画の撮影を開始してから2年目のことしは12回の撮影を行った。門脇小学校閉校、区画整理ほか各種工事開始、本間家土蔵の曳家など地域の大きなうごきがあり、青池組としても大街道南5丁目に撮影拠点を開設し、よりいっそう石巻にご縁とおつきあいが増した年だった。

門脇町・南浜町・雲雀野町の震災まえの世帯数は1772、人口は4423人。現在は25世帯、60人。新しいコミュニティづくりはつづき、わたしたちの撮影もつづく。

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