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撮影雑記(19)2016/0311〜0314

text & photos   青池 憲司    Post   2016.8.6

第23次撮影行。今回のロケには、いまは大阪で仕事をしている山田武典がひさしぶりに参加し、マイクを握った。5回目の鎮魂の日に合わせての訪石である。まねきコミュニティのみなさんも再会をよろこんでくれた。

3月11日。地震と津波から5年の日日がすぎ、門脇・南浜・雲雀野地区の震後を記録するわたしたちの撮影は3年目に入った。丸2年の間、この地のコミュニティを、人の語りと集団の活動で捉えてきた。風景の移り変わりをロングショットとクローズアップで撮ってきた。その基本姿勢はこれからも変らない。

土地の嵩上げにともない、場所を少しだけ移動したまねきコミュニティの集会所「まねきの家」前の広場では慰霊祭が開かれた。地元の住民だけでなく、いまは仮設住宅や余所に住むかつての住民も多く参集した。午後2時46分、石巻市中の防災無線から黙祷開始のサイレンが鳴るはずだった(事前に何回もアナウンスされていた)が、機器のトラブルで鳴らず、それを待っていた人びとは途惑い顔で合掌黙祷した。

ふいにおとずれた静寂のなか、隣の西光寺で打つ鐘の音が聴こえて、辺りはやわらかな雰囲気につつまれた。サイレン(警報)なしでよかった。日没とともに追悼のメッセージ入りキャンドルが点灯された。宵闇のなかにおだやかな灯があふれ、人びとはなお去りがたく、あの日のこと、あれからのこと、日日の暮しのこと、地域の明日のこと、話は尽きなかった。

3月12日。朝早くに遠来の客がやってきた。神戸市長田区野田北部に住む河合節二さん。阪神大震災後の住民主体の復興まちづくり活動を担った男である。いまも「野田北ふるさとネット」の事務局長として活躍している。まねきコミュニティを訪れるのは初めてだが石巻には何度かきている。本間英一さんやまねき住民を紹介する。この日のロケは住環境の変化や建設工事現場、風景撮りが中心で、河合さんはわたしたちと終日同行して門脇・南浜の現状をつぶさに実見してくれた。被災後のコミュニティをどう再生するかという一点で、震災から21年のKOBEと5年のISHINOMAKIの住民交流の切実度が増している。

3月13日〜14日。現住民さんと元住民さん8人(80代の女性から女子中学生)にインタヴュー。

もうここまできたのか・まだここまでしかきていないのか、とつぶやく老女性。震災の体験をどのように学習するのか・いかに継承するのか、と自問する男性教師。震災前の地域の成りたちを掘り起こしそれを伝えていきたい、と語る初老の男性。新しいコミュニティと寺のありかたを模索する僧侶。雲雀野町の旧北上川河口近くの光景は津波に流された直後とまったく変っていない・手がつけられていない、と呆然とする中年女性。ことし大学に入りまちづくりの勉強をする、という震災当時の女子中学生。

被災から6年目のはじまりの思いをきいた。

宮城県石巻市
一之瀬正史と山田武典
宮城県石巻市
慰霊の日の飾り付け
宮城県石巻市
右から、河合節二、一之瀬、山田
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