撮影雑記(10)2015/0727〜0801
text & Photos 青池 憲司 Post 2015.11.27
7月29日。午前中は各所諸氏への挨拶まわり。アイトピア通りの呉服店「かめ七」さん、洋品店「品川や」さん、ISHINOMAKI2.0の拠点「IRORI」、「巻.com」、「石ノ森萬画館」、「石巻ニューゼ」(英語のニュースと仏語のミュゼ=博物館を合せた造語。館内には、震災直後に発行した石巻日日新聞の号外『手書き壁新聞』をはじめ、石巻圏の出来事の新聞資料写真が展示されている)などで、近況情報の交換と四方山話。毎回、これは欠かせません。
午後、仮設向陽団地に及川彦兵衛さんを訪ねました。3回目の訪問(撮影では2回目)。事前の電話では、毎日ゴロゴロしてるだけで、新しいことはないし、なんの変わりもないよ、との言。それはよかったですね、なんの変わりもない話をきかせてください、と出かけました。初めてインタヴューしたのはもう10か月もまえなのに、きのうのつづきのように話がすすみました。毎日の暮しぶりをきくと、食事の摂りかた、掃除洗濯の仕方、くすりの飲みかた、夕方の仮設団地内の散歩、酒の呑みかた、震災後に亡くなったおくさんへの語りかけ、ゴロゴロしているどころか、「毎日、何かとやることがあり、けっこうキチンと生活している。門脇へかえるまではその繰り返しさ」。「仮設の外へ行くのは週1回のデイサーヴィスのときだけ。送迎バスが市内何か所かをまわるのでそれがたのしみ」。「20度の焼酎をコップ半分、水割りで呑み、7時には床に入る。ラジオを聴きながら眠ってしまう」。話のナカミといい口振りといい、見事なまでに前回インタヴューとおなじでありました。それもよし。また、お話しましょう。
原野の一画、南浜町1丁目にある門脇排水ポンプ場を撮影。旧北上川河口近くの「おわんこ」(船溜まり)に接して建っています。津波で水没し機能を失い、そのご廃止され、いまは廃屋状態です。この地域には門脇町3丁目にも日和山排水ポンプ場(被災後、名称と区域が変更され、現・石巻中央排水ポンプ場)があり、約7,700㎡をカバーしていました。この地域になくてはならない施設です。
30日。遠藤佳子さんの菜園で野菜の朝採りを撮影。近所に住む小学4年生小笠原悠吏くんが手伝いにきていました。夏休みになってから、遠藤家の犬の散歩と朝採りお手伝いが、かれの日課になっています。7時、ふたりは、きゅうり、インゲン、トマトを手早く穫っていきます。てきぱきとことばを掛け合いながらの作業は見事に息が合っています。穫り入れが終ると、近隣家へのお裾分けの"朝市"。本間英一さんが近くの仮側溝で蟹を捕まえたとやってきました。沢蟹ではなく海蟹。「震災まえはこの辺で海蟹を見たことはない」。ここは海岸から800mほどの距離にあります。「南浜にも震災まえは蟹はいなかった」。震災後はいたるところで変化変容が起きているようです。
高橋興治さんに話を聞きました。前回のインタヴューから約10か月ぶりです。この間の住環境の変化について。「工事の進行状況にはいいたいことはあるが、現場の作業者はよくやってくれている」。「まねきコミュニティの住人は数世帯ふえた。いずれも元からいた人か縁者」。「これから、新住民もふえてくる。いまは、新しい町内会のための人づくり、基礎づくり」。新しい町内会とは、いまの門脇町2丁目から5丁目までを横断する自治会構想である。「地域へかえる人かえらない人、それぞれあっていいが、別れはさすがにつらい……」。
地下水の汲み上げと排水のパイプラインが、嵩上げ宅地や道路工事のいたるところで見られます。どぅどぅと水が流れ出ています。ただ、塩分がつよく、花木や野菜などへの水遣りにはむかないそうです。まねきの家辺り、稱法寺近く、2丁目バス停辺りのそれを撮影。
橋本喜代三さんインタヴュー。震災まえの門脇町3丁目に50年ちかく住み、いまはアパートに仮住いしています。元・石巻日日新聞記者で、取材はすべて、まちの風を感じながら自転車でまわったそうです。門脇・南浜地区の往事の暮しを語ってもらいました。「刺し網漁の漁師さんが大勢いた。旧北上川河口では、うなぎ、白魚、蝦蛄などが獲れた。おわんこ(船溜まり)で待っていて、獲れたてを直に買ったりした」。「造船所があって、船大工や家大工も多く職人町でもあった」。ジャーナリストとして「石巻圏の資料は相当持っていたが、全部津波で流されてしまった。くやしいね」。門脇へかえるかどうかは思案中だといいます。「もう年だし、家建てても住みつづけてくれる者がいなければ……ね」。
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