撮影雑記(18)2016/0212〜0217
text & photos 青池 憲司 Post 2016.7.10
第22次撮影行。2月12日。新門脇地区宅地基盤整備と区画道路工事、新避難路工事など。地域の物理的環境は微々たる変化しか見られない。
13日。「震災遺構に関する公聴会(旧門脇小学校)」が門脇中学校の体育館で開かれた。門脇中は、門脇小児童が震災後から閉校するまで4年間通学していた校舎である。門小映画二部作撮影時は、わたしたち撮影隊もここに通った。
公聴会への出席者は、まねきコミュニティの人たちやかつての門脇町住民、関心のある市民など約40人。行政側は、亀山紘市長をはじめ関係職員。意見発表者は9人。うち、保存賛成が5人、解体賛成が3人、「断片的で総体的な議論がない、もっと時間をかけるべきだ」が1人。以下、それぞれに印象に残ったことばを挙げる。
◉保存賛成
未来の子どもたちやこれから生きる人たちを津波の被害から守るために、旧門小校舎は防災教育の「学びの場」になる。
旧校舎の保存がまちづくりの妨げになるのではなく、震災遺構と融合したまちづくりができないか。
亡くなった人はどこかで、自分たちと同じ亡くなり方をするなよ、と訴えているような気がします。ご家族の気持ちを配慮した上で遺構を残すことができれば、大きな津波の被害を5世代、10世代後の子孫に伝えて残せると考えます。
ここにも人びとの暮しがあって、それが壊されたのです。あの震災を考えよう、感じよう、伝えようとするときに、新しいもの、きれいになったものだけが目の前に広がっていても、なかなか心にはとどかず、きもちがうごかされるものではありません。
◉解体賛成
公費を使用しての保存には反対。わたしは門小校区に25年居住したことがあり、子どもたちも門小を卒業しているので思い入れはあるが、市民の税金である公費をこのような"非生産的でノスタルジック"な事業に使用する余裕がどこにあるのでしょうか。
津波の被害について、門小は間接証拠に過ぎない。それほど大きな費用を払って伝えるほどのものには思えない。重要なのは、よりよく生きるために歴史を学ぶという思想を社会全体で共有すること。学ぶ人はどんなものからでも学ぶ、学ばない人は何があっても学ばない。
隣接地に南浜復興祈念公園がすでに予定されている。解体後の跡地の利活用については、門小跡地に記念碑を建立する。土地は各種災害対策用公共事業用地(仮設住宅用地等)として、更地のままにして市が管理する。
これらの意見に対して亀山紘市長は、「保存と解体を支持する住民の率直な意見を聞くことができた」と述べ、年度内に保存の是非を判断する方針を決めることをあらためて強調した。
それに対して、ある住民は「市長はことあるごとに、各界の意見を広く聞いた上で結論・決断するとの発言を繰り返している。一見、民主的に聞えるが、行政としての主体性・自主性が欠如している」と不信感をあらわにした。
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